致死量100%生存率10%未満の

致死量100%生存率10%未満の        橋本正秀

『あ・ほうかい』13号(2009年3月)所収の詩です。

 

          (1)

致死量100%生存率10%未満
の憧憬絶句次第あふおれは致死量
の夢を胸に絶望する生存率19%
の尊厳をはまちにしてそのたゆと
う姿一片のコンクリートを間近に
遠近錯綜混濁の渦にまみれしぶく
日の陰を探索希求粉砕目指すはし
ばしの夢コンサートすがるかげう
つろの下世話たちまちさしこむ狭
間の一刻虫食む球体完全証明定か
な自自のうわばみすくう手ざわり
おぼえる夢の夢中差し込む失意の
個性みなぎる禁禁薬薬残存希求心
存亡一片の夕暮れしぼむ機械うむ
装置の楽天生活一本気の涯膨張す
るいらかいらかさすらう花火ひさ
ぐ道すべりひるひるむかう致死量
10%のひとひのアトモスファー
しぶる日ざしあざやか薫白のひと
色うごめくうごめきさする際際高
木に寄せる街々ひさぐ致死量白白

 

     (2)

蕩尽する遺伝子の白日の白々しさ
に夢を保つ日のせわしさヒト二万
二千個センチュウ二万個ショウジ
ョウバエ一万三千個シロイヌナズ
ナ二万五千個のお祭りに狂う夢分
化する意思の目的細胞の祭り踊り
分掌理解する日めくり判断する極
小の存在うろたえのぞむ理由と万
華と設計受精卵の横暴と万能の煩
悩世界にせわしくうごめき虚飾す
る裸の魂増殖する百面相の面々嬰
児は視る瞼の父と母の存在の理由
目蓋の兄と姉の変幻の確かさと無
明するおぞましい遺伝子の暗躍行
路の涯しない驚がくのまこととう
わさの世界を「危ふきところに遊
ぶ」独り言蕩尽する遺伝子行き斃
れるクオリア胞衣のみちびき咆吼