大学卒業直後、伊藤隆夫(故人)、村瀬範夫さんと最初の給料で同人誌『円』を発行しました。「デスの共鳴」はその時の作品。今読むと、20代前半特有のの若々しさと直截な感情表出にエネルギーが感じられます。

 

   デスの共鳴
                         橋本正秀


 デスのころがるカワラ
 空をめがける夢が風車に破裂する
 〈それとも〉
 俺の腐敗に
憤怒する
    反吐のからくりが
   周辺に
 たちこめる
      臭気に
   さらに
 おののいて
 〈俺を〉
 めがけて
                        環帰する

 〈その日〉
 初秋は蹴破られながら
 萩をたわわに飛散させる
 時間いっぱい噛みつく曼珠沙華
 散らばる視界に
 あ・あ・あ…………〈お・れ・の〉
 意志をめがけるデスを連らねる
 俺の腕が俺の脚が
 汚点(しみ)だらけに染色する彼方
 黙って〈祈る〉べきものを持てというのか

      ※

 俺の中デスが反転嘔吐し
 呪縛へとつきすすむ 失明の日
 〈ただ〉
 トワイライトを渇求する喃語
 黒塗悶死大地を
 デスが
 うねるうねる

 俺の夢は発条の律動に歪像しながら
 粉砕機へと自動する
 〈その時〉
 浮腫に白く鈍輝する縞が
 俺の体皮を
 なめるなめる

 退転 退転

 ジェットコースターに遮蔽される五官
 破滅の予兆に充満する
 濃緑の淵へと誘う

      ※

 新月の夜の黄昏
 いまや
      街では
   デスの祭儀の始まり
 荼毘の炎にあおられて
 デスが
    踊る踊る
    誦う誦う
 法悦のサタニスムの饗応

 〈その時〉
 日和見をぐりのガイスト
 むくっと起きれば
 噴きあがる情念
 凍れる目ん玉
 をぐり判官の正念場 正念場

 火葬かえ 土葬かえ
 唄う怨霊
 白木の骨箱 土饅頭

 貴様は貴様 俺は俺
 〈腐れ縁〉切るしがらみに喉元つかれ

 口八丁手八丁の空を打つ
 しっかと握った萩の手応え
 老舗の看板 金の文字

 〈その日〉
 首元折って宙を彷徨う意志の回帰する
 ノラのほつれの彼方に
 溢れる咆哮溢れ出るデスの群れ
 色褪せる曼珠沙華の遮二無二
 黙って応えてくれる〈神〉はないのか